全仏のベスト8でナダルに粉砕された錦織。その時は、そこまで行く段階でフルセット(セット数3-2の勝利なので5セットを闘う。約4時間)を闘い続け、もう息も絶え絶えの状態での対戦だった。辿り着いた先のナダルという壁。誰もが負けを覚悟し、その通りになった。
でも、今回のウィンブルドン(全英)は違う。1回戦、2回戦を共に3-0で勝ち上がり、3回戦は少し苦戦したが3-1で駆け上がった。待ち受けるフェデラーは勿論、それよりも簡単に勝ち上がり体調は万全だが、錦織だって遜色はない。
1セット目フェデラーがまだエンジンを全開にする前に錦織が早い攻めでポイントを取り、1ゲーム目でブレーク(相手のサーブの試合に勝つ)だ。錦織自身も必勝を期して早いタイミングで強いボールを打ち続け、フェデラーをねじ伏せた。
その後もブレークチャンスは再三訪れたが、そこはフェデラーも許さず、この最初のゲームのブレークが両者を合わせて唯一のブレークとなり、錦織が1セット目を6-4で制した。よし、期待した通りいけるゾ!
今朝の深夜から始まったこの試合はWOWOWの他にNHK総合でも放送され、全国のテニスファンが目をこすりながら見続けたことだろう。
でも・・・2セット目でエンジンを吹かし始めたフェデラーはコーナーに低い弾道でボールを滑らせ、何とかラケットを伸ばし返した錦織のボールをネット際で叩きつけて壁の高さを見せつけた。
それでも「粘り」が信条の錦織は何とか食らいついて行くが、ここ一本でフェデラーのサーブに粉砕され、結局セット数3-1で敗れた。勝てた試合だったか?そう思えた人は少ないだろう。
終盤になるほどフェデラーとの力の差が歴然となっていく試合を見ながら、日本人というかモンゴル種の人間(中国、韓国も同様)の限界として受け止めた人も多かったのではないだろうか。身長177cmの錦織は上から叩きつけるサーブでは確率が下がるため、どうしても少しアーチを描くサーブになりスピードが出ない。
そこへ来て、「一番サーブがどこへ来るか読みづらい」と錦織本人が言うフェデラーのサーブがワイド、Tゾーン(センター)と精密機械の如く炸裂すれば、勝利の確率は自ずと低くなる。
全英の準決勝に進んだ「ビッグ3」ジョコビッチ、ナダル、フェデラー・・・
この3人に4大大会で勝つことの難しさを改めて見せつけられた全英でありました。
ps:女子は群雄割拠というか、力が安定しないというか、誰が勝つか分からないが男子の場合はビッグ3の誰かが勝つという時代になっている感じです。錦織、こんな時代に生まれて不幸だったのだろうか。それとも幸せなのだろうか。