全米オープンの男女シングルスが終わった。期待された錦織圭(世界7位)は3回戦で若手に敗れ、大坂なおみ(世界1位)も4回戦で散った。大坂は相性が悪かったとも云えるが、錦織はミス連発での敗退。30歳の大台に乗る錦織は3強(ジョコビッチ、ナダル、フェデラー)のように30歳を過ぎてなおテニス界をリードし円熟味を増していくのか、それとも徐々に遅れをとっていくのか。
優勝は、男子はナダル(33歳スペイン)、女子はアンドレスク(19歳カナダ)だ。
ナダルはこれで19個のグランドスラム(全豪、全仏、全英、全米)を達成した。一方で女子のアンドレスクは初めてのグランドスラム制覇。しかも昨年は予選の一回戦で敗れ世界208位だった選手の優勝という快挙だ。
男子決勝戦を見て、思ったのはその驚異的な体力と精神力。相手のメドベージェフ(23歳)も冷静なプレーと技術に裏付けられたコーナーへの打ち分けで何度もナダルを追い込み約5時間に及ぶフルセットに持ち込んだが、最後に僅かのズレで優勝をナダルに譲った。
ナダルはそのプレースタイルから柔らかいコートを好む。サーブのスピードは並みだが、ラリーになると山なりのスピンボールやスライスボールなど様々な球種を効果的に打ち分け、相手のミスを誘い、守備に回るとどんなボールにも食らいついて返球するし、そのコースも厳しく逆襲となる。どんなボールも返球するナダルにとって柔らかいコート(土のコート)はバウンドしてからボールスピードが緩み追いつき易くなるという点で有利だからだ。
そういう意味ではビッグサーバーに有利な全米のハードコートは比較的苦手で全仏のクレーコートを得意とするが、今回の優勝で全米も4回目の制覇となった。
彼のテニスを見て感動するのは、多分、守備と攻撃の多彩さだと思う。もうダメだ、というような相手の攻撃に対しても端から端まで走り、気合とともに反撃のボールを打ち続けるさまはとても人間技とは思えないからだ。彼は見るからにマッチョであるが、それはウエイトトレーニングの結果でもあろう。
あれだけ、全力で走り、あれだけボールを叩き続ける肉体を維持するのにどれだけのトレーニングと筋肉が必要か。ナダルはそれを肉体でも見せている。そして何があっても感情的にならず、ひたすらボールを打ち続けるナダルは今では日本人が見失ったサムライのようでもある。
そのナダルが決勝のスピーチで感情が込み上げてくるのを必死にこらえていた。試合中には抑え込んでいた激情だが、もともとは熱い熱い魂の男。「感情が込み上げてくる」と何度か言いつつも、相手のメドベージェフを称え、そのチームを賞賛し、盛り上げてくれた観客に感謝し、自分のチーム、家族にありがとうを伝えるまで込み上げるものを抑えながらスピーチを終えた。
いつもそうだが、ナダルやフェデラーの優勝スピーチはいつも観衆を魅了する。そしてそれは今回も外れることなく見事なスピーチで締めくくったものでした。ナダル、まだまだテニス界に君臨してくれヨー。
ps:全米の結果、錦織は7→8位、大坂なおみは1→4位にランクを落とした。