失うものの無い水戸、一泡吹かせてやる、という気構えがみなぎる水戸。その勢いが前半に如実に表れた。
水戸の右サイド(鹿島の左の溝口サイド)でマティウスが何度も突破して、自らゴールに迫り、時にクロスを上げて来る。
そういう状況に手こずっている最中の水戸のカウンター。マテウスは右サイドから難なくボールを前方に運び、ぽっかり空いたペナルティアーク付近に低い弾道のクロスを送り、これに中央から入って来たエースの渡辺が合わせて左隅(鹿島の右)に決められた。前半、34分のことだ。
鹿島側でもビッグチャンスはあった。前半の15分頃だったろうか、ユウマが左サイドのゴールライン際から上げたふんわりのクロスがGKの頭を超えてファーに届いた。呼吸のピッタリあったジャンプでこのボールをヘディングしたのは荒木。目の前の空間に押し込めば良いだけだったが、少し右サイドに弾いたボールは無情にも右ゴールポストを叩いてしまった。
後半の15分には相手DFの中心だったダニーロが退場となり、いよいよ逆転の進撃が始まるかと思ったが、逆に水戸は守備を徹底することでカテナチオ状態になってしまった。
投入された松村に期待したが、松村は最初にいつものように縦に抜いて、見事なクロスを上げ、ユウマのダイレクトボレーを引き出していたが、相手DFを警戒してか縦へ抜けずに後ろに戻す回数が多くなり、濃野もまた同じようなことで「攻め」へのチャレンジが減衰していったように感じた。
幸い、アディッショナルタイムでレオセアラのクロスが相手(大崎)のハンドとなり、PKをゲットし同点に追いついたが、PK戦では苦い結果となった。
PK戦で度肝を抜かれたのは水戸監督樹盛(きもり)のガッツだ。最初のキッカーにPKを与えた大崎を選んだのだ。この選定に樹森監督の信念と信頼と賭けを感じた。勝利目前でPKを与え、誰の目にも肩を落としている姿をさらしていた大崎。
彼(大崎)を最初のキッカーとしたことのメッセージを勝手に想像した。
①大丈夫、お前なら出来る
②落ち込んでなんかいないでやってみろ
③俺はお前に懸けたゾ
失敗するとどうなるか。そのリスクはあった筈だが、樹森監督は無言で「ファイト!」と伝えたのだ。
そして結果は大崎のPK成功、逆に鹿島は知念、植田と連続失敗で勝敗を分けた。
この監督、やるな。俺は勝手にそう思った。